掘っ立て小屋というのは、柱を直接地面に埋め立てて作るのが基本です。しかし今回は、地面に基礎柱(杭)を埋め立てて、そこに柱をジョイントする方法を採用しました。この方法には、メリットがたくさんあるんです!
「掘っ立て小屋」の多大なるメリット
一般的な建物や小屋を作る場合、まず最初に地面にコンクリートの基礎をガッチリと作ってから土台を載せ、さらにその上に柱や壁を立ち上げていくのが普通です。ウチの主屋やログハウスも、その方式で建てました。
でも、今回のような簡素なガレージで本格的な基礎を作るのは、いかにも大げさな気がしますよね。お金もかかるし、時間もかかる・・。そこで私が多用しているのが、「掘っ立て方式」のセルフビルドです。
「掘っ立て」というのは、建物の柱を直接地面に埋め立てて作っていく方法。伊勢神宮の社殿などにも見られる、昔ながらの伝統構法です。この最大のメリットは、基礎や土台を作らないので圧倒的に工事期間が短くなること。今回の小屋も1週間ほどで完成できました。
また、柱自体を地面に埋める単純明快な構造なので、優れた耐震性や耐風性を初心者でも簡単に実現できることも利点だと思います。
そして、管轄の自治体によっても扱いは異なると思いますが、私が暮らすエリアでは基礎や床のない建物で、屋根材を波板の直貼りで作ると固定資産税がかからないことも大きなメリットでした。
すでにウチの敷地内には、掘っ立て方式でセルフビルドした小屋が2つ建ってます。とくに田舎暮らしをしていると、汚れた靴のまま自由に出入りできる土間のある掘っ立て小屋というのはメチャクチャ便利に活用できます。どちらも『小屋大全』で詳細な作り方を解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
掘っ立て方式の建物は、必要最小限の工具と知識で建てられます。多少の誤差も気にならないので、素人のセルフビルドには超オススメですよ!
掘っ立て小屋の「弱点」をクリアする鉄則
ただし、この掘っ立てのスタイルには、ひとつだけ大きな弱点があります。それが「柱の腐れ」です。ご存知の方も多いと思いますが、木材は土に直接触れている環境だと、適度な水分によって腐朽菌が繁殖して徐々に腐ってしまうのです。
それを防ぐためには、柱の表面を焼いて炭化させたり、防腐塗料を施すのが普通ですが、私の経験だとそれらの対策をしても10年単位で見るとどうしても腐れは発生してしまいます。そこで、前述したウチの掘っ立て小屋では、ふたつの工夫をしました。
まず、最初に作った小屋では屋根の軒を深くして、できるだけ柱や周囲の地面に雨が当たらないようにしています。これだけでも、柱の腐れをかなり遅くすることができました。実際、この小屋は作ってから15年ほど経ちますが、柱の腐れはゼロです。
屋根の軒を深くする工夫で、柱やその周辺の地面を濡らさないことがポイント
つぎに建てた掘っ立て小屋では、外壁を柱から50センチほど離した状態で立ち上げることで、柱の周囲の地面に雨水がしみこむのを防いでいます。これは私が考案したスタイルで、「アウトリガー方式」と名付けました(^^ )。
方法は簡単で、掘っ立て柱の外側にツーバイ材などで新たな支柱を立てて、そこに外壁を張っていくだけです。ポイントは、支柱の下側に防腐加工材の端材を地面に埋め立てて、支柱と端材をビス留めして一体化させること。このときの工夫が、今回のジョイント式掘っ立てスタイルのヒントになりました。
柱の外側に新たな支柱を立てて、そこに外壁を張っていくのがミソ。支柱の下には、防腐加工材の基礎杭を入れました
ジョイント式の掘っ立て柱で完璧!
そして、3棟目となる今回の掘っ立て小屋で考案したのが、柱の埋め込み部分が腐ったら、そこだけ簡単に交換できるシステムです。
具体的には、長さ1mほどの防腐加工材を基礎柱として地中に埋め立て、それに添わせるように90㎜角の柱を立ててボルト留め。柱の下には防腐加工材の端材をはさんでおけば、基礎柱を交換するときでも建物は自立状態をキープできます。もちろん、端材自体もいつでも交換可能。基礎編のイラストを参考にしてみてください。
建築費用は12坪で12万円!
今回のガレージの総工費は12万円台(金物類を除く)。坪単価で約一万円の計算です。業者に鉄骨ガレージなんかを注文したら、その10倍以上の金額はするので激安といえるでしょう。
使用した材料は90ミリ角の杉材と2×4材がメインで、すべてホームセンターで入手しました。私は建材問屋にも出入りしてますが、木材に関してはホームセンターで買っても金額的に大差ないですね。
また、チェーンソーが使える人なら、森林組合から安い間伐材を購入して柱に使えば、さらに安価に作ることができるでしょう。
工房や貯蔵庫、宴会所?としても大活躍してくれる掘っ立てガレージ。おそらく、この広さの小屋では「一番安く」「一番速く」そして、「一番簡単」に作ることができる方法だと思います。ぜひ、ご自分で作ってみませんか?
↓↓構造図を大公開! 参考にしてください!
準備編へ続く